Us 4 IRIOMOTE THE MOVIE
西表島の豊かな自然と暮らしを旅するドキュメンタリー映画『生生流転』。
2021年7月26日、日本の南西端に浮かぶ西表島が世界自然遺産に登録されました。“東洋のガラパゴス”とも称されるこの島は、90%が亜熱帯の原生林で覆われ、日本のマングローブ林の25%を有し、絶滅危惧種のイリオモテヤマネコやオオハナサキガエルなども生息。また、五穀豊穣、健康と繁栄を祈願する島の伝統行事「節祭」をはじめとした島の文化・風習があり、これまで多くの観光客を魅了してきました。しかし、注目度が高まるにつれて、オーバーツーリズムによる観光公害も加速。そんな自然・人々の暮らし・環境問題を3年間かけて撮影した、西表島の“今”を伝えるドキュメンタリー映画『生生流転』が、この度公開になりました。これから西表島の行く人もそうでない人も、まずはこれを観て、先人たちの教えを守って「島と共に」生きてきた人々の暮らしがあるということを知ってください。
- Photo_Choji Nakahodo
Edit_Jun Nakada
映画『生生流転』は、現在YouTubeにて無料配信中。
「仕上がりの形が見えないまま、ご縁に導かれるようにして、コロナ禍をくぐり抜け、2018年6月から、3年間撮影を続けてきた。3年なんて長い長い島の歴史から見れば、点のような大河の一滴。それでも通えば通うほど、知れば知るほど、西表島の“何が素晴らしいのか”が、少しずつ感じられるように なっていった」
こう語るのは、本映画作品の監督・撮影・編集を手掛けた、西表島と同じ八重山諸島にある石垣島出身のシネマトグラファー、仲程長治さん。絵コンテも台本もなく、色で繋ぎ、季節で繋ぎ、人で繋いだという作品は、ドキュメンタリーであり、短編小説のようでもあります。
「知ろう」「守ろう」「話そう」「残そう」の4つのキーワードを軸に、西表島の自然と文化を守り、次世代へ繋ぐことを目的として〈KEEN(キーン)〉が牽引するプロジェクト「Us 4 IRIOMOTE」。その一環として製作された映画『生生流転』は、今回の世界自然遺産登録を機に、ますます増えていくであろうツーリストに向けた、啓蒙の手助けにもなっています。
西表島が抱える問題と「Us 4 IRIOMOTE」プロジェクト。
日本の南西端に浮かぶ西表島は、周囲約130km、人口約2,400人の島です。西表島はその大部分が亜熱帯の森に覆われ、森には大小様々な河川が縦横無尽に流れています。その川の流れは日本最大のマングローブ林や低湿地帯、水田など人が暮らす環境を通り、色鮮やかなサンゴ礁や熱帯魚が暮らす海に流れていきます。そこにはイリオモテヤマネコやカンムリワシ、ヤエヤマセマルハコガメ、ナリヤラン、サキシマスオウノキなど、絶滅危惧種を含む多種多様な動植物が生きています。
見渡す限りに広がる白い砂浜、エメラルドグリーンのビーチ、マングローブのある湿地帯、夜には蛍が飛び交う森、見たことがないほどの星空。そんな、南の島というワードから想像できる情景のすべててが揃っているのが西表島です。
そんな国内有数の大自然と貴重な生態系が色濃く残る西表島ですが、近年ではその環境破壊が問題になっています。それがオーバーツーリズムによる観光公害と、海洋を漂う大量のゴミが島に漂着することで美しいビーチやマングローブが破壊されていること。
なかでも漂着ゴミの問題は深刻で、国内はもちろん目と鼻の先にあるアジア圏から流れてくるゴミは90%以上がプラスティック製。もちろん自然に還ることはありません。毎年訪れる台風シーズンや冬の季節風シーズンには大量のゴミが海岸線やマングローブのみならず、その奥にある森の中まで海流が押し寄せ、表面的には美しい自然の景観が広がっていても、一歩裏側まで足を踏み入れてみると、そこには目を覆いたくなるような光景が広がっている場所がいくつも存在します。
そして、漂着ゴミと並んで大きな問題となっているのが、西表島特有の貴重な生態系が破壊。世界でもこの島にしか存在しない絶滅危惧種、イリオモテヤマネコの数は年々減少の一途を辿っています。理由は、観光客が増えたことによる交通量の増加で、道路に飛び出してきた動物を誤って轢いてしまう事故が多発していること。しかし、電車が通ってない島内での生活には車は必需品。そこで、自治体では島内を走る車に昼夜問わず40km(町・村の中は30km制限)の速度制限を呼び掛けていて、万が一イリオモテヤマネコをはじめとする動物たちが飛び出してきても事故を防げるように努めています。
このような、西表島が抱える問題を解決する一助になるために〈キーン〉が発足したのが「Us 4 IRIOMOTE」プロジェクト。今回発表した映画『生生流転』もそのひとつです。ブランドを常日頃から愛用する人にもそうでない人にも、西表島の大自然を通してその魅力を伝えていきます。こちらの記事でさらに詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
映画『生生流転』は、次世代に向けた島の貴重な資料。
本映画作品は、島の先人である野生生物や祖先への感謝を忘れずに、季節の巡りと節目ごとの行事に沿って暮らす郷土歴史家の石垣金星さんと、途絶えていた昔ながらの手仕事を復興させ、島の自然素材を用いた染織文化を生み出す石垣昭子さんをメインに、国内最大のマングローブ林を守るネイチャーガイド、島の食物連鎖の頂点に立つイリオモテヤマネコを守る活動、近年深刻さを増している海岸線の漂着ゴミや、懸念されるオーバーツーリズムなど、日本で最初のエコツーリズムが始まった西表島で「今、起きていること」を3年にわたって記録したもの。
「ここには、僕が生まれた石垣島とはまた異なる、この島独特の自然や文化がある。ゆったりと回帰する時間の中で、すべての命が繋がりあって、少しずつ変化しながら循環している。ありのままの島の姿に心が震えるほど感動したし、体の中で眠っていたいくつもの感覚が確かに呼び覚まされた。五感を通り越して、それ以上に感じるものがあった。僕たちが出逢った自然や人は、西表島の大いなる営みのほんの一部分に過ぎない。だから“知っている”なんて言葉は口が裂けても言えないけれど、それでもこの島の本当の素晴らしさを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思う。文化をつくるのは人間だし、それを壊すのもまた人間。いつまでも自身が“知らない”ということを“知っている”。謙虚な来訪者の一人としてこの島と繋がっていたい。そして、“私たちにこの自然を少しだけ分けてくださいね”という気持ちで、西表島を訪れる人が増えることを願いながら、この映画を撮り続けてきた。」と、仲程さんが語るように、生物多様性に満ちた自然だけが注目されがちですが、すべては先人たちの教えを守って“島と共に”生きてきた人々の暮らしがあってこそ。
「撮っていただいた身としては、なんでこれが映画になるの?って最初は思っていました。でも完成した映画を観て、私たちがあたり前と思っている生き方が、正しかったんだと再認識できた。変わらないことが素晴らしいということ。それに、私たちも、昔はどうだったんだろうっていう疑問がたくさんあって。50年前の祭事のあり方とか暮らし方とか、手探りするのにまったく資料がなくて。ましてや映像なんてまったくないですので、そういう意味では次世代に引き継ぐための資料としては、非常に立派なものなんじゃないかなって思います。この映画を観れば、西表島の魅力がすべてわかります」と語るのは、実際に西表島で暮らす石垣昭子さん。
西表島の豊かな自然を守り、伝統文化を継承していくのは、そこで暮らす人たちだけに課せられた使命ではありません。島の現状を知り、明日のためにできることを考えるのは、旅行者にだって求められていること。
生物多様性はなぜ重要なのか? 行事や祭りをなぜ継承するのか? イリオモテヤマネコを脅かしているのは誰か?「自然との共生」とはどういうことなのか? 私たちツーリストはどんな気持ちで西表島を訪れればいいのか?
本編にある、石垣夫妻をはじめとする、西表島の人たちの日々の暮らしは、「忘れていたあたり前のこと」、「自然体で暮らすこととは何か」、「持続可能な暮らし方と何か」など、ひとりの人間として忘れかけていた大切なモノを思い出させてくれます。国の内外から注目が高まる今だからこそ、観るべき作品と言えるでしょう。
INFORMATION
『生生流転』
監督・撮影・編集:仲程長治
編集補佐・脚本:松島由布子
プロデューサー:竹田尚志, 松島由布子, 鈴木照雄
映像提供:笠井雅夫, 森本孝房, 菊池篤, 西表野生生物保護センター
ドローン撮影:DJI JAPAN
題字:長場雄
プロジェクトマネージャー:井上泰子
制作:Us 4 IRIOMOTE/SUDERU
特別協賛:KEEN JAPAN
主題歌:Ryu Matsuyama「Roots, trunk, crown」
音楽:金城あかり, 森朗, 加納由美, 仲嶺良盛
2021 / 日本 /カラー / 16:9 / 118min ©Us 4 IRIOMOTE
公式サイト:www.us4iriomote.org/
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